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第2回電王戦 - 16年の進歩 [雑記]

将棋の第2回電王戦で、コンピュータソフトが3勝1敗1分けという勝利を得ました。チェスに続いて将棋も、という思いと、予想していたよりもかなり早くこの時がやってきたか、という驚きがありました。
しかしながら、相変わらず馬鹿なマスコミがわけのわからないことを言っており、またかという逆の意味での驚きもありました。なぜなら、…

以下の文は、チェスで、コンピュータソフトが人間のチャンピオンのカスパロフに勝ったときに書いたもので、日付はほぼ16年前のことです。そこには、
一方、日本のマスコミの報道は、「論外」である。彼らの馬鹿さ加減をなんとかしてほしいものである。
        「人間がコンピュータに負けた」
        「コンピュータは人間を越えたのか?」
        「それでも人間のほうがえらい」

とか。
なんだこれは!? コンピュータは進化しても、マスコミの頭のレベルは進化しないということの、明確な証拠です。あまりにも情けない…。16年といえば、赤ん坊が高校を出るくらいの教育期間があります。でも、マスコミは16年前と、まったく同じ馬鹿なことを言ってるだけです。どうしたら、マスコミを教育できるのか…。


では、私の16年前の文章です。


DeepBlue vs. Kasparov  (97-6-15)

 DeepThoughtの後継機でIBMへ開発が継続された、DeepBlueが1997年5月に、ついにチェスのグランドチャンピオンである、カスパロフを2勝1敗3引き分けで打ち破った。特に、1勝1敗3引き分けで臨んだ最終の第6戦では、なんと19手でカスパロフのクイーンを奪い、その時点でカスパロフは「投了」した。
 素直に負けを認め、DeepBlueの強さを誉めたまでは、よかったのだが、その後のカスパロフの敗戦の弁:

  「大企業が私に的を絞って開発したものだから、いろいろな人を相手に戦ったときにDeepBlueが勝つとは思わない」
  「DeepBlueに入力したという過去のチェスのデータが私に知らされていなかった」

 これは、いただけない。
 IBMがカスパロフに的を絞って開発したからといって、それは、単にカスパロフがグランドチャンピオン、つまり、一番チェスの技術を持っている人間だからである。それよりも劣る人間を相手にして開発したところで、グランドチャンピオンに勝てる見込みはあまりない。しかし、グランドチャンピオンを相手に開発したのであれば、それより技術的に劣る人々に勝つ見込みは、はるかに高い。もし、今のままもう一度7回戦行なったなら、カスパロフが勝つ確率は50%程度あるだろう。しかし、カスパロフでない人間と7回戦行ったなら、DeepBlueは僅差〜大差で勝つだろう。
 カスパロフは再度ゲームを行ないたいと言っている。いずれにしても、次回の対戦が非常に楽しみである。(しかし、IBM側の開発者は、「もう対戦はやらない」と言っている。非常に残念なことだ。)

 一方、日本のマスコミの報道は、「論外」である。彼らの馬鹿さ加減をなんとかしてほしいものである。

        「人間がコンピュータに負けた」
        「コンピュータは人間を越えたのか?」
        「それでも人間のほうがえらい」

 とか。

 まず第一に、このチェスの試合は、「コンピュータ対人間」では断じて“ない”。サイエンスに載ったDeepThoughtの論文*1で著者が言うように、「これは、一人の人間の恵まれた才能を、多数の人間の集団的な努力がそれを越え得るか?*2」という「『個人 対 集団』の人間同士」の戦いなのである。DeepBlueは、非常に多くの人間に負っている。コンピュータ工学は言うまでもなく、電子工学(コンピュータハード)、量子工学(LSI設計)、電気工学(電源)、冶金工学(LSIの製造)、電波工学(LSI内の信号の流れ)、そして、それらを支えている基礎科学(物理・化学・数学等)。200年近い(あるいは、以上)人間の集団的な努力が実って、今回、才能に恵まれた個人を越えたのである。この成果をDeepBlueだけに帰そうとするのは、まったく愚かなことであるし、DeepBlueを支えた非常に多くの人たちに対して失礼である。名誉棄損どころの騒ぎではない。マスコミには、彼らに対して謝罪してもらいたいものである。
 (このころ、クローン報道に関してもマスコミの馬鹿さが目だったので「今回もか!」という背景もある)


参考文献:
*1 1990年日経サイエンス、「コンピュータはチェス名人に勝てるか」、実近憲昭訳(原題 "A Grandmaster Chess Machine"、原著者 許峯雄, Thomas Anantharaman, Murray Campbell, and Andreas Nowatzyk、原論文掲載誌 SCIENTIFIC AMERICAN October 1990)
*2 上記原文では「人間の集団的な努力が、もっとも才能のある個人が到達した最高の芸に優るかどうか」となっている。名言である。

追記:
97年8月に、こんどはオセロで、コンピュータとの6戦が行われた。オセロのチャンピオンである村上さんは、6戦全敗して負けた。しかし、村上さんの言葉がよかった。「コンピュータに負けたとは思っていない。なぜなら、人間のつくったプログラムと戦ったのだから。」


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